補聴器の両耳装用について

両耳装用だと、方向感覚が改善されて騒音下での聞き取りが良くなります。両方の耳で聞くことが、聞こえの快適さにつながります。両耳装用は右脳・左脳の働きを活発にして、高度で情緒豊かなコミュニケーションを生み出すのです。

Q.どちらの耳に補聴器をつけたらよいのでしょうか? A.補聴器をつける耳を決定するのには一般的な原則があります。難聴が固定しているのか、変動しているのかといった状況や治療中であるのかといった問題も関係してきますが、両耳が難聴であった場合の一般的な補聴器をつける耳の決定原則は次表のようになります。
両耳の聴力に左右差があまりなく、語音検査*も良好な場合は両耳装用をおすすめします。

難聴の状態による補聴器をつける耳

語音聴力検査=語音聴力検査は「ア」・「カ」・「サ」などの五十音の言葉を1音ずつ聞きとる検査です。聞きとれた音の割合を計算して、どれだけ聞き取れたかを知ることができます。これを、「語音明瞭度」といい、パーセント(%)であらわします。音の大きさを何段階かに変えて、一番多く聴き取れたときの語音明瞭度を「最高語音明瞭度」あるいは「語音弁別能」といいます。伝音性難聴では音量を大きくする必要がありますが、結果はおおむね正常範囲の明瞭度となります。感音性難聴では音量にかかわらず明瞭度は正常以下となるケースが多くなります。この検査では、語音明瞭度がわかるだけではなく、どの音がどのように聞こえているのかを知ることができます。たとえば、「タ」が「ア」に聞こえる、「ギ」は音がわれて言葉として聞きとれない、というようなことです。語音聴力検査は聞こえの能力を否定的にとらえるものではなく、聞こえの状況を把握するための大切な検査方法です。
*ダイナミックレンジ=不快に思う聴力レベルから閾値を差し引いたものです。
*語音弁別能=語音聴力検査で一番多く聞き取れたときの語音明瞭度を「最高語音明瞭度」あるいは「語音弁別能」といいます。

聞こえで「お困りのようす」を実際の声や音にたとえれば、

ささやき声・静かな会話

ささやき声や静かな会話を聞き間違えたり、聞きとれなかったりする・・・・軽度難聴

ふつうの会話

すぐそばで、ゆっくり、大きな声で話すと聞きとれる・・・・・・・・・・中程度難聴

大きな声の会話

耳元で話すと聞きとれる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・高度難聴

叫び声・ジェット機の轟音

かなり大きな音ならどうにか感じられる・・・・・・・・・・・・・・・・・重度難聴

最近ご自身の聞こえに問題があると感じたら、聞こえの自己チェックをしてみてください。

聞こえのチェック表

難聴の程度

Q.「両耳装用」の意味は? 補聴器は両耳に装用するほうがいいってホント? A.両耳装用とは補聴器を左右の耳に同時につけることです。両耳に装用することで人が本来持っている二つの耳の機能が生かされます。
「なぜ私たちには耳がふたつあるのか」ご存知でしたか?聞こえる音の多くは反対の方向の脳へ、即ち、右耳から左脳へ、左耳から右脳へ伝わります。言葉の内容は左脳で処理され、感情や情緒の「情報」は右脳で処理されます。言葉を理解したり、話すためには左脳が大いに働き、総合的にものを考えるのは右脳の役目です。右脳と左脳を充分に働かせるためにも、両耳で聞くことが大切なのです。

両耳装用により左右の耳からバランスよく音を聞くことで、「音の方向感覚がより良くなる」・「騒音の中でも聞き取りがより良くなる」・「より自然な感じで音を聞ける」という利点があります。1対1の会話に不自由を感じなくても、会議、多人数での会話、レストランなどの聞き取りにくい場所での聞こえに効果的です。ヨーロッパやアメリカでは難聴者の60%の方が両耳装用をしています。

聞こえの範囲と両耳の効果

Q.1対1の会話には不自由ないのですが、会議で人の話がわからないことがあります。
 A.補聴器を左右の耳につける両耳装用なら小さな声も聞きやすくなり、声や音の方向感覚もつかみやすいので、会議などにも適しています。最近では左右の耳につけた補聴器と補聴器が無線で互いに通信しあって片方の補聴器を調節すればもう一方も同時に自動で調節されるという便利な補聴器もあります。

この機能によって左右の調節ミスによる左右の音量感や聞こえの方向性に誤差も少なくなり、補聴器を両耳で使うメリットがさらに生かされます。

Q.両耳割引があると聞きました。補聴器の両耳装用はやはり価格も2倍になるのでしょうか? A.一般的には価格が2倍になりますが、両耳に、同時に、耳あな形のオーダーメイド補聴器をご注文の場合、両耳割引価格で補聴器を購入していただけます。ごく一部ですが、耳かけ形にも両耳割引があります。両耳で使う補聴器が非常にお求めやすくなるシステムです。

※一部例外はありますが基本的に耳かけ形、ポケット形には両耳割引は適応されません。